東ソー・クォーツ株式会社

石英ガラスとは

石英ガラスは名前の通りガラスの一種ですが、他のガラスが種々の成分からできているのに対し、石英ガラスはほぼSiO2だけからできています。石英ガラスに含まれる金属不純物の量は極めて少なく、多いものでも数10ppm(10万分の1)、少ないものでは10ppb(1億分の1)以下です。このように、純度がきわめて高いということが、他のガラスには見られない石英ガラスの優れた特長をもたらしています。

石英ガラスの主な特長

石英ガラス素材について

当社では、関連会社である東ソー・エスジーエム株式会社が製造する石英ガラス素材の中から、お客様の要求品質・仕様に対して最適な素材を選択し、製品を製造いたします。本ホームページでは当社が使用する石英ガラス素材のラインナップと各種特性を紹介していますが、素材の詳細データについては、下記の東ソー株式会社ウェブサイトを参照ください。

石英ガラス素材ラインナップ

分類 製造法 グレード名 特徴
溶融石英 酸水素溶融 N 気泡が少ない半導体用標準グレード
NP Nの高純度品
S 光透過性に優れた超高純度溶融石英ガラス
OP-1 半導体用白色不透明石英
OP-3 半導体用白色不透明石英の高純度品
OP-3HD OP-3の表面平滑性を高めたグレード
電気溶融 HR 耐熱性に優れた半導体用標準グレード
HRP HRの高純度品
合成石英 火炎加水分解
(直接法)
ES 汎用光学向け
ESL-1 1方向脈理フリー
ESL-1000 1方向脈理フリー、エキシマレーザー対応
ESL-2 3方向脈理フリー
ESL-2000 3方向脈理フリー、エキシマレーザー対応
火炎加水分解
(VAD法)
ED-H 3方向脈理フリーの有水グレード
ED-C 完全無水グレード(OH基濃度<1ppm)

純度

溶融石英ガラスは主に天然水晶を、また、合成石英ガラスは主に四塩化ケイ素を原料として製造されています。含有する不純物は、溶融石英ガラスでppm、合成石英ガラスでppbレベルでしかありません。

◎代表的石英ガラス素材の化学分析例
単位:ppm
種別 グレード Al Ca Cu Fe Na K Li Mg OH
溶融 透明 N 8 0.6 <0.01 0.2 0.6 0.1 <0.01 0.04 200
NP 7 0.5 <0.01 0.1 0.1 0.03 <0.01 0.02 200
S 0.7 <0.01 <0.01 0.05 0.3 <0.01 <0.01 <0.01 160
HR 15 0.6 0.02 0.2 0.8 0.6 0.5 0.1 10
HRP 15 0.6 0.01 0.2 0.2 0.6 0.2 0.1 10
不透明 OP-1 8 0.7 <0.01 0.2 0.5 0.3 0.07 0.04 160
OP-3 7 0.6 <0.01 0.07 0.06 0.03 0.07 0.02 160
OP-3HD 7 0.6 <0.01 0.07 0.06 0.03 0.07 0.02 160
合成 透明 ES*1 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 1000
ED-C <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <1
ED-H <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <100

(数値は代表値であり、保証値ではありません。)

*1:ESL-1,ESL-2,ESL-1000,ESL-2000の純度はESと同等。

化学的特性

優れた耐薬品性を持つ石英ガラスは、種々の溶剤や酸溶液の蒸留および各種物質の溶解・洗浄容器として最適です。ただし、フッ酸、リン酸、アルカリ・アルカリ金属化合物の溶液およびそれらの雰囲気では、石英ガラスのエッチングや表面失透が起こるため、長時間の使用には注意が必要となります。

◎石英ガラスの反応性(酸、アルカリ)
溶液 条件 減量(g/m2
濃度(%) 温度(℃) 時間(Hr)
アルカリ溶液 NH4OH 10 20 100 0.19
NaOH 1 20 100 0.31
10 20 100 0.095
5 100 10 15
8 100 10 12.1
KOH 1 20 100 0.19
30 100 10 0.27
10 10 100 11.3
Na2CO3 5 20 100 0.015
10 100 10 3.7
酸溶液 H2SO4 98 205 24 0.06
98 20 240 0.016
HNO3 65 115 24 0.11
65 20 240 0.06
HCl 37 66 24 0.14
37 20 240 0.18

(数値は代表値であり、保証値ではありません。)

◎石英ガラスの反応性(金属・その他)
金属 Al, Mg 700-800℃で速やかに反応
Au, Ag, Pt 反応しない
Zn, Sn, Pb 反応しない
Si 溶融状態で僅かに反応
Ge 900℃で反応しない
Mo, W 反応しない
酸化物 Al2O3 900℃以上で徐々に反応
CaO 900℃以上で反応
CuO 800℃以上で反応
Fe2O3 900℃以上で反応
PbO 溶融時激しく反応
MgO 900℃以上で僅かに反応
ZnO 420℃(Znの融点)以上で反応
ガス CO, SO2 反応しない
N2, O2 反応しない
Cl2 反応しない
F2 乾燥雰囲気300℃以下で反応しない
H2 反応しない
HCl 反応しない
BaCl2 溶融時反応
BaSO4 700℃以上で反応
CaCl2 800℃(CaCl2の融点)で僅かに反応
KCl 高温で失透促進
KF 溶融時激しく反応
NaCl 800℃以上で反応顕著
Na2SO4 反応しない

光学的特性

光学用素材としてESシリーズとEDシリーズをラインナップしています。いずれも高純度SiCl4を原料とした合成石英ガラスで不純物、泡・異物をほとんど含まず、真空紫外~赤外領域の幅広い波長領域で優れた光透過性を有しています。

◎代表的石英ガラス素材の光学的特性
グレード 脈理*1 均質性*2
Δn(x10-6
歪み
(nm/cm)
エキシマ耐性 適用波長*3
(nm)
ES 不問 不問 1~20 不問 180~2,100
ESL-1 1D 3~10(有効:φ300mm) 1~10 不問 180~2,100
ESL-1000 1D 3~10(有効:φ300mm) 1~10 応談*4 180~2,100
ESL-2 3D <10(有効:φ300mm) 1~10 不問 180~2,100
ESL-2000 3D <10(有効:φ300mm) 1~10 応談*4 180~2,100
ED-H 3D 5~10(有効:φ180mm) 1~10 不問 170~2,600
ED-C 不問 不問 1~10 不問 180~3,400

(数値は代表値であり、保証値ではありません。)

*1:脈理仕様は次のように定義する。1D:1方向脈理なし、3D:3方向脈理なし

*2:屈折率の均質性を意味し、有効エリアに対するΔn(PV)値の代表値。
さらなる高均質材、サイズ、保証値は別途打ち合わせ。

*3:本適用波長とは、外部透過率が80%/cm以上である波長を意味する。

*4:東ソー・エスジーエム(株)の定めるKrF及びArFエキシマレーザー耐性試験をベースに別途打ち合わせ。

◎代表的光学用石英ガラス素材の光透過特性

機械的、熱的、電気的特性

石英ガラスは他物質に見られない特異な性質を持っています。例えば、剛性率、引張り強度、曲げ強度などは温度上昇とともに高くなりますが、800~1000℃で最高に達し、それ以上の温度では粘性低下などの影響で急激に低下します。

◎代表的石英ガラス素材の各種特性
項目 単位 ES*1 ED-C ED-H N, NP HR, HRP S OP-1,3 OP-3HD



密度 g / cm3 2.2 2.2 2.2 2.2 2.2 2.2 2.02 2.1
ヤング率 GPa 74 74 74 74 74 74
剛性率 GPa 31 31 31 31 31 31
ポアソン比   0.18 0.18 0.18 0.17 0.17 0.17
曲げ強度*2 MPa 94.3 94.3 94.3 94.3 94.3 94.3 60 67
圧縮強度 MPa 1,128 1,128 1,128 1,128 1,128 1,128
引っ張り強度*2 MPa 49 49 49 49 49 49
ねじり強度 MPa 29 29 29 29 29 29
ビッカース硬度 MPa 8,900 8,900 8,900 8,900 8,900 8,900 8,900 8,900


歪点
(η=1014.5)
970 970 1,060 1,070 1,120 1,060 1,050 1,050
徐冷点
(η=1013)
1,080 1,080 1,170 1,180 1,220 1,165 1,170 1,170
軟化点
(η=107.6)*3
(1,720) (1,720) (1,720) (1,720) (1,720) (1,720) (1,720) (1,720)
平均線熱膨張率
30~600℃
x10-7/ ℃ 4.7 4.7 4.7 5.9 5.9 5.9 6.9 6.9
比熱
20℃
J / kg・K 749 749 749 749 749 749 749 749
熱拡散率
20℃
x10-7m2/ s 8.5 8.5 8.5 8.3 8.3 8.3 8.4 8.5
熱伝導率
20℃
W / mK 1.38 1.38 1.38 1.38 1.38 1.38 1.24 1.33
粘度
(logη)1200℃
Poise 10.60 10.60 11.37 11.72 12.18 12.10 11.72 11.72



比誘電率 
500MHz
  3.9 3.9 3.9 3.9 3.9 3.9 3.7 3.8
誘電体損失
500MHz
x10-3 <1 <1 <1 <1 <1 <1 <1 <1
体積抵抗 Ω 5×1015 8×1015 8×1015 3×1015 8×1015 4×1015
体積抵抗率 Ω・cm 1x1017 1x1017 1x1017 5x1016 1x1017 7x1016

(数値は代表値であり、保証値ではありません。)

*1:ESL-1, ESL-2, ESL-1000, ESL-2000の機械、熱、電気特性はESと同等。

*2:曲げ強度、引っ張り強度はガラス表面状態の影響(表面粗さ、傷等)を強く受けます。

*3:測定値からの外挿値。

※特に明記無い限り、表中の数値は25℃での代表値。